マイクロアレイは遺伝子やタンパク質の網羅的な解析に用いられる技術の1つで、スライドグラス基板上に配置された数千もの遺伝子やタンパク質を一度に検出し、遺伝子発現やタンパク質量の変化を解析することで、生命科学や医学の研究・検査などに利用されています。

原理

ここでは一般的なDNAマイクロアレイについて解説します。

DNAマイクロアレイで用いられるスライドグラス基板には、DNAプローブが高密度に並び固定されています。これらのプローブは通常20〜70塩基程度の配列で、調べたい対象の遺伝子の特定領域に相補的な塩基配列をしています。

解析を行いたいサンプルから目的の塩基配列を持つ一本鎖DNA(cDNA)を作成し、マイクロアレイの基板上に固定されたプローブと反応させます。cDNAとプローブが相補的な塩基配列であれば結合します(ハイブリダイゼーション)。ハイブリダイゼーション後、蛍光標識や放射性同位元素を用い基板上に固定されたcDNAの量を測定します。各DNAプローブのシグナル強度が測定され、各遺伝子の発現量が推定されます。

活用例

医療

遺伝子の変異や発現のパターンに基づいて疾病の研究や分類を実施する際に利用されています。

例えば、染色体異常や遺伝子の欠失が特定の疾患と関連しているかを調べたり、がん組織と正常組織の間での遺伝子発現の違いを明らかにしたりすることが可能です。

他にも、ウイルスや細菌などの病原体の感染時に、宿主の遺伝子発現パターンがどのように変化するかを調べることで、感染症の病態や免疫応答の理解に役立ちます。

創薬開発

薬剤開発において、薬物の標的分子や効果を評価するのに利用されます。ある薬剤がどのようにして遺伝子発現パターンを変化させるかを調べ、薬剤の効果や副作用を理解するのに役立ちます。

農業/養殖

品種の遺伝子発現解析により、特定の遺伝子が生育や抵抗力にどのように影響を与えるかを理解し、遺伝子改良のための情報を提供します。

マイクロアレイの強み

マイクロアレイ解析は他の解析法と比較し、データサイズが小さく、解析を始めるにあたっての初期投資やランニングコストが低いのが特徴です。サンプル数が少ない場合や特定の遺伝子に焦点を当てた解析を行う際に優れています。